司法書士コラム

パソコン使用も可に! 相続法改正で遺言書作成・保管はどう変わる?

2019.4.25

2018年7月13日、『民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(改正相続法)』が公布。
今回の見直しは高齢化社会の進展などに対応するためのもので、多岐にわたる改正項目が盛り込まれていますが、その一部に『自筆証書遺言』の方式緩和、そして遺言書の保管制度の創設があります。
今回は、わずらわしかった遺言書の作成や保管にまつわる改正点を、詳しくご説明します。
①現行法では、高齢者の事業承継が困難に……
【事例】
Aさんは、妻と共に機械部品製造業を営んでいましたが、妻が死亡し一人暮らしに。
父親の健康を心配した長男のB夫さんが帰郷し、Aさんと同居しながら事業を手伝っていました。
やがてAさんは、高齢化に伴って心身の衰えを感じ、家業を息子のB夫さんに承継させる決意をします。
遺産としては、自宅の土地建物(評価額4,300万円)、その地続きにある事務所・工場の土地建物と駐車場用土地(評価額合計5,400万円)、また、預貯金として金融機関三行の預金と郵便貯金(合計3,220万円)がありました。
Aさんは、このうち土地建物と預貯金2,000万円を長男のB夫さんに、そして預貯金1,220万円を長女のC子さんに相続させる旨の遺言書を自筆で作成することにしました。
 
現行法では『自筆証書遺言』とは、遺言者が遺言書の財産目録を含む全文、日付および氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。
つまりAさんは、遺言の本文、日付、氏名のみならず、B夫さんとC子さんそれぞれに残す遺産の詳細な目録も、すべて自分で手書きして作成する必要があり、パソコンなどは使用できません。
書き間違えや変更したいことがあれば法律の取決めに従った加除訂正をしなければならず、その訂正方法に不備があった部分は無効となってしまいます。
この厳格な現行法に基づいて、何日もかけてすべて手書きで行われた遺言書作成は、高齢で視力や手元のおぼつかないAさんにとって、非常に苦労を伴うものとなってしまいました。
 
②全文の自筆は不要となり、高齢者にも光明が
このように、現行法では作成が大変だった自筆証書遺言ですが、改正相続法では、利便性の観点からその方式が緩和され、自筆証書に相続財産の目録を添付する場合には、その目録については自書する必要がなくなりました(968条2項)。
目録をパソコンなどで作成できることはもちろんのこと、遺言者以外の者が代筆することもでき、さらに銀行の預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書などを目録として添付することもできるようになったのです。
 
このため、もしAさんの自筆証書遺言が改正相続法施行後だったのであれば、Aさんが自筆する必要があるのは、本文の、「別紙目録1ないし3の不動産、別紙目録4の預貯金をB夫に、別紙目録5の預貯金をC子に相続させる」と日付、そして署名のみ。
後は、パソコンやコピーでつくった別紙目録1ないし5を添付すれば、正式な遺言書は完成です。
ただし、施行後であっても、遺言の偽造を防止するためにも、自筆によらない部分の目録の全ページに、記載がページの両面におよぶ場合には両面に、くまなく署名押印しなければなりません。
ちなみにこの印は、遺言書本文に押捺された印と必ずしも同一のものでなくてもかまいません。
また、目録を含む自筆証書を加除その他変更することもできますが、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨の付記を証書にして特にこれに署名し、その変更の場所に押印しなければなりません(968条3項)。
このように、財産目録だけでも手書きの負担が軽減され、記載内容の不備により無効となる危険も減り、高齢者でも自筆証書遺言をしやすいように改正されました。
今後、高齢化が進むなかで、自筆証書遺言の利用が増加することが見込まれます。
改正相続法は順次施行されていきますが、この自筆証書遺言の方式緩和については、いち早く2019年1月13日から施行されています。
③公的機関が遺言書を保管する新制度も創設
その他の改正相続法の遺言制度に関する見直しとしては『法務局における遺言書の保管等に関する法律』が同時に公布され、公的機関(法務局)における自筆証書遺言に関わる遺言書の保管制度が創設されています。
わかりやすく言うと、法務局が『自筆証書遺言』を保管してくれる制度です。
これは遺言書の紛失などを防止し、また、遺言書の真正をめぐる紛争をできる限り抑止するため、法務局による自筆証書の遺言書を保管する制度を創設し、その効果として、家庭裁判所による遺言書の検認を要しないとするものです。
制度施行後は、遺言者は自ら作成した自筆証書の遺言書について、遺言者の住所地又は本籍地又は所有する不動産の所在地を管轄する『遺言書保管所』に自ら出頭して、その遺言書保管官に対して保管申請をします(4条)。
遺言書保管官は、遺言書をデータ化して画像データを遺言書保管ファイルで保管、管理します。
遺言者は、いつでも自ら遺言書保管所に出頭して、当該遺言書(原本)の閲覧をすることができます(6条)。
また、いつでも自ら同所に出頭して撤回書等を提出することで、上記保管の撤回をすることができます(8条)。
遺言者の相続人、受遺者等は、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求や遺言書原本の閲覧請求をすることができます(9条)。
 
家庭裁判所による遺言書の検認が不要となるため、相続登記や遺産である預金の解約手続などが早期に行われる利点が生まれます。
改正で大きく変わるさまざまなことの一つであるこの遺言書保管制度についても、施行後の活発な利用が予想されています。
施行は2020年7月10日からとなっています。
 

 

事故物件を相続した場合にかかる税金と対策方法

2019.3.10

一般的に“事故物件”と呼ばれる自殺や他殺、変死などが起こった物件。

当然ながら入居者は見つかりにくく、資産としては悩ましいものです。
そんな物件でも相続をする場合は、通常通りに相続税がかかります。
今回は、事故物件を相続しなければならなくなった場合に考えられる対策方法を見ていきましょう。
 
1)事故物件の多くは『心理的瑕疵物件』
不動産業界では、事故物件のことを『心理的瑕疵(かし)物件』と呼んでいます。
ここでいう瑕疵とは、不具合や欠陥のこと。
つまり、実際に欠陥が露わになっていなくても心理的に影響を受ける場合がある物件、ということです。
心理的要因は人によって感じ方が異なるため、一概に定義することはできませんが、基本的には「借りる前(買う前)に知っていたら住まなかっただろう」という心情を持つような物件を、心理的瑕疵物件としているようです。
賃貸で部屋(家)を借りる場合であれば、事故物件であることを知った時点で断ることができますが、相続となるとそうはいきません。
たとえば、高齢で一人暮らしをしていた実母が自宅で自殺をしたとします。
自宅が実母名義のものであれば、その子どもなど相続人にあたる人が相続をすることになります。
 
2)事故物件も通常物件と同額の相続税
事故物件であれ、相続税は徴収されます。
また、誰も住まないような状況になったとしても固定資産税を支払わなければならないのです。
さらに、その家を維持するための定期的な清掃やセキュリティ管理など、税金以外の費用や手間がかさむ場合も出てきます。
もし、この先住む予定がなかったり、活用できずに持て余しているのであれば、売却したほうがメリットは大きいでしょう。
不動産会社によっては敬遠されることもあるようですが、事故物件を専門に取り扱う業者もあるので、売却することは可能です。
事故物件に対しての不動産売買価格は、その周辺相場の2~3割程度、場合によっては半値程度で売却されることが多いようです。
事故物件には告知義務があります。
心理的瑕疵がある物件は、その内容を買い手や借り手に事前に知らせることが、宅建業法47条で定められています。
これを怠ると、後に発覚した場合に訴訟にまで発展してしまうケースもあるので、十分注意しましょう。
 
3)新法の施行で古家の税率が上がった
土地に家屋が建っている場合、かつては更地に比べて固定資産税はおよそ6分の1だったので、古家をそのまま放置してしまうケースが散見されていました。
ところが、2015年に『空家等対策の推進に関する特別措置法』が施行され、古い物件での固定資産税の税率が上がったのです。
 
事故物件を相続し、それを運用する場合、通常の不動産取引と同じ感覚ではうまくいきません。
税金等は通常物件と同等にかかります。
なるべく早期に不動産業者へ相談することで、相続に関わる費用がある程度抑えられるのではないでしょうか。

 

生産緑地の2022年問題、その対応策とは?

2019.2.19

都市部をはじめとした全国各地には、“生産緑地”に指定されている農地があります。
市街化区域内にありながら農地として扱われている生産緑地は、農地としての管理が求められる代わり、固定資産税が農地並みに軽減されるなどの優遇措置を受けています。
この生産緑地が抱える『2022年問題』が、今、注目を集めています。
そこで今回は、『2022年問題』とは何なのか、どのような対応策が考えられるのか、ご紹介します。
 
1)そもそも『2022年問題』とは?
 
生産緑地制度は、1991年の生産緑地法の改正により始まりました。
その背景には、都市部の開発が進んだことによる住環境の悪化や自給率の低下があり、
それらに歯止めをかけるために始められた制度とされています。
翌年、法律に基づいて都市部の一部の農地は生産緑地となり、固定資産税や相続税についての優遇措置を与える代わりに30年間の営農義務が課されました。
つまり、生産緑地は転用して農地以外に使用することはできなかったということです。
この年、多くの農地が生産緑地の指定を受けましたが、それから30年が経過する2022年には指定が解除され、自治体への買い取り請求が可能になります。
これにより不動産市場にも大きな変化がもたらされることが予測されており、これが『2022年問題』と呼ばれています。
生産緑地法の改正時には2022年に自治体が時価で買い取るという想定でしたが、実際には予算不足で買い取り拒否となる場合が多いと見込まれています。
その場合でも転用、売却は可能であり、もし宅地に転用すれば時価で売れるため、高額売却も期待できます。
そのため宅地などに転用するケースが多数起こると見込まれ、これによる不動産市場への影響が懸念されているわけです。
 
2)生産緑地の指定解除の条件、手続き方法は?
 
生産緑地を農地以外の用途で使用するためには、指定を解除しなければなりません。
そのための条件は下記の3つとなります。
 
【生産緑地の指定解除の条件】
(1)生産緑地指定から30年が経過した場合
(2)病気などの理由で主たる従事者が営農することが困難になった場合
(3)主たる従事者が死亡し、相続人などが営農しない場合
 
この3つの条件のうちいずれか1つを満たせば、生産緑地の指定解除を行うことができます。
手続きとしては、まずは各自治体に生産緑地の買い取りの申し出を行います。
自治体は申し出を受けてから1カ月ほどで買い取るかどうかを決定しますが、財政上の理由から買い取り不可となるケースがほとんどとなるでしょう。
買い取り不可となれば、各自治体が農地としての買い取り先をほかに探し、農業従事者に対して2ヶ月ほど斡旋を行います。
もし買い取られない場合、生産緑地は解除され通常の農地となるため、転用や地目変更などの手続きが可能となります。
以上が手続きの大まかな流れですが、自治体によって対応が異なる場合もあるため、詳細な手続き方法は各自治体に必ず確認するようにしてください。
また、指定解除の手続きには3ヵ月ほどかかります。
申請を行う場合には余裕をもったスケジュールを組むようにしましょう。
なお、生産緑地の指定を延長することもできますが、農地は維持管理が必要であり、相続した子世代にも営農義務が課せられます。
 
3)指定解除後の土地はどう活用する?
 
では、指定を解除した生産緑地の活用方法としては、どのようなものがあるのでしょうか。
具体例をご紹介していきます。
代表的な活用事例としては、まずアパートやマンション経営が挙げられるでしょう。
生産緑地の多くは都市部に存在するため、宅地としての需要が非常に高くなっています。
一般的な戸建て用の土地に比べて面積が広い場合も多く、その広さを活かして賃貸用のアパートやマンションを建築すれば、大きな収益が見込めます。
また、固定資産税の削減や相続税対策としても有効です。
それほど広くない土地でも、都市部の土地なら戸建てとしての賃貸需要が大いに見込めます。
一旦賃貸したのち、自身の子供世代の住居や老後の住居とすることもできます。
初期費用を抑えた運用には、駐車場経営が挙げられるでしょう。
もし別の目的で利用したくなったとしても、駐車場契約の解除は比較的容易であり、撤収しやすいのも魅力です。
利用者から荷物を預かるトランクルームもコスト面では優秀です。
荷物が置ければよいだけなので設備も簡易的でよく、更新のための費用も抑えられます。
借り手が見つかれば退去も少なく、安定した収益が見込めることもメリットでしょう。
そのほか「シェア空き地」「シェア畑」「資材置き場」「コインランドリー」など、さまざまな活用方法が考えられます。
ちなみに、認可保育所やデイサービス、グループホームなどの第二種社会福祉事業に転用する場合は、指定解除の条件が満たされていなくても解除できる可能性があります。
生産緑地の指定解除にはさまざまなメリットがある反面、優遇もなくなるため多額の固定資産税がかかるなどのデメリットもあります。
相続税の納税猶予制度を利用している場合は、指定解除で猶予されていた相続税と利子税を納付しなければならないので注意が必要です。
来たる2022年に備え、生産緑地をどのように運用すべきか、今から対策を考えておくとよいでしょう。
 
 

こんなはずじゃなかった! 注意すべき土地相続トラブル その2

2019.1.28

前回は、先祖代々受け継いできた土地を息子さんに贈与したAさんの事例を紹介しました。
Aさんが、さらに末永く承継してもらおうと土地を託した息子さんは、離婚と再婚、そして早すぎる死を迎えることに。
その結果、土地をめぐって息子さんの前妻と後妻が相続闘争を繰り広げ、Aさんは、彼女たちからこの土地を取り戻すため、相当高額なお金を支払う羽目になりました。
Aさんは、はたしてどこで間違い、どのような点に注意していれば、このような事態を防ぐことができたのでしょうか? 
事例を振り返りながら、原因と打開策をご紹介します。

原因(1) 息子さんの将来設計を読み誤った
Aさんが若かった頃と比較して、最近は結婚や家系に対する価値観が大きく変化し、事実婚や生涯独身といった選択肢も増え、離婚に対するハードルもずいぶんと下がりました。
息子さんが結婚して妻子を持ったからといって「これで○○家は安泰だ!」とはいかない時代になっていたのです。
むしろ「将来何が起こるかわからない」という前提で対策を立てておかなければ、今回のように将来設計を見誤ることにもなりかねません。
 
原因(2) 息子さんとの関係性を読み誤った
Aさんは、長男だからという理由だけで、先祖代々受け継いできた土地をわが子に託しました。
しかし、息子さんが再婚し、Aさんの意向に反して子をもうけなかったため、Aさんと息子さんとの関係にひびが入ってしまいました。
Aさんと息子さんとの関係性が良好であれば、話し合って土地を取り戻すこともできたかもしれません。
しかし、いくら親子でも疎遠になってしまっては、他人以上にコミュニケーションが取りづらくなるものです。
「家族だから」「長男だから」という理由で安易に財産を譲るのではなく、血のつながりのある近しい関係だからこそ、万が一トラブルが発生した場合に備えて対策を立てておかなければなりません。
 
それでは、Aさんが先祖代々の土地を守り、次世代に受け継いでいくためには、どうすればよかったのでしょうか?
次に、打開策を考えていきます。
 
打開策(1) 遺言書を準備しておく
親が元気なうちは、自身の手で土地を守っていくのが賢明です。
自身だけでは守り切れない場合、専門家等の第三者や信頼できる親族に管理を任せるとしても、所有権は親の元に残しておき、万が一トラブルが生じた場合にはいつでも自身の手元に戻せるようにしておきましょう。
他方で、親に万が一のことがあった場合に備えて、その時点で親が希望する承継先に土地を譲ることができるよう、遺言書を残しておきましょう。
遺言書で定めておけば、万が一承継先との関係性や将来設計が変わり、承継先を変更したいと考えた場合にも、ご両親の意向で遺言書を書き換えることができます。
遺言書は、一度作成したから終わりというものではなく、何度も書き換えられるところに大きな意味があります。
 
打開策(2) 信託契約書で土地の管理を託す
次に、親の高齢化によって判断能力が衰えてきた場合は、土地の管理を信頼できる親族や第三者に委ねましょう。
その際、親が存命中は老後の生活資金の確保に重点を置き、親が亡くなった後は希望する承継先に土地を譲ることができるよう、信託契約書を残しておくとよいでしょう。
信託契約書で定めておけば、土地の管理を委ねられた受託者は契約上の責任を負いますので、親が認知症などで判断能力を失ってしまっても、元気なうちに残されていた意思に基づいて土地を管理し、親の老後の資金も確保することができます。
親が亡くなった後も、信託契約書では、次世代、次々世代の承継先を定めておくことができるので、先祖代々の土地を後世にも守ってもらいたいと考える親にとっては、遺言書よりも信託契約書の方が、その意思を死後に実現していくことが可能です。
 
相続対策は、まだ元気なうちにこそ、老後のことから亡くなった後のことまで考えて始めるようにしておきましょう。
そして、対策は一度したら終わりではなく、状況の変化に応じて、
自身の意思をより実現しやすい方法に切り替えながら続けていくことが大切です。

 

こんなはずじゃなかった! 注意すべき土地相続トラブル その1

2018.12.21

土地の相続をめぐるトラブルはいつの時代も存在します。
息子に土地を相続したはずなのに、自身の思惑とは違った方向に事が進み、「こんなはずじゃなかった!」という事態に陥って困っている方もいらっしゃると思います。
今回は、ある家族の土地相続トラブルの事例をご紹介するとともに、その原因や打開策を全2回にわたって解説していきます。
●息子の離婚と再婚、そして……
【事例】
Aさんの息子さんは、適齢期に結婚し、孫息子が生まれていました。
しかし家事分担や育児で徐々に奥様と口論になることが増え、夫婦関係が悪化。
やがて息子さんの浮気が発覚したこともあり、最終的には離婚することになりました。
離婚の際は、夫婦で築き上げた財産を分け合う財産分与を行いますが、息子さんがAさんから託された土地については、夫婦で築き上げた財産ではなく、財産分与の対象にはなりません。
そのため、土地は息子さんの手元に残りました。
しかし孫息子は、親権者に母親が指定されたため、前妻の元で育てられることになりました。
息子さんは離婚後まもなく浮気相手と再婚しましたが、家事分担や育児が原因で前の結婚が破綻したこと、後妻となった女性も仕事の継続を望んだことなどから、今回の結婚では子どもをつくらないという選択をしました。
Aさんとしては、A家の後継者を残すためにも早く孫の顔が見たいと、息子さんや後妻を急かしました。
しかし逆に2人の反発を買い、親子関係がこじれてしまいます。
Aさんが「そんなことなら、お前にやった先祖代々の土地を返せ!」と怒鳴りつけても、息子さんは聞く耳を持ちません。
そうこうしているうちに、息子さんは不慮の事故で早すぎる死を遂げてしまいました。
遺言書はなかったため、息子さんが受け継いだ土地のうち半分は離婚した前妻の元で育つ孫息子の、もう半分は後妻のものに。
しかし取り分をめぐって、前妻と後妻の間で相続闘争が繰り広げられることになってしまいました。
●買い戻すしかなかった土地・事前の対策はあったか
 
孫息子はA家の血筋ですから、前妻が受け取った半分の土地は、彼のものといえます。
しかし現在は小学生と幼く、また前妻のもとで育てられており、土地は事実上、前妻が受け継いでいることと変わりありません。
そして前妻がその土地を売却してしまえば、土地は第三者の手に渡ってしまうことになります。
せっかくこれまで受け継いできた土地が半分に減らされるばかりか、ゆくゆくはそれも失われてしまうかもしれない――このことを危惧したAさんは、息子さんの前妻からも後妻からも、土地を取り戻すことを強く希望しました。
しかし、この時点で土地はすでに息子さんの手に渡り、その息子さんも亡くなって相続が発生しています。
Aさんができたのは、前妻と後妻の2人から土地を買い戻すことだけでした。
最終的に土地はAさんの手に戻りましたが、市場価格と比較しても相当高い金額を支払わざるを得ませんでした。
 
Aさんは一体、どこでどのような間違いを犯してしまったのでしょうか?
そして、どこに気をつければ、このような事態を防ぐことができたのでしょうか?
 
次回は、今回の事例をもとに、原因や打開策をご紹介します。

 

知っておくべき3つの相続方法

2018.11.21

相続人が確定し、遺産の概要が判明した場合、それらをどう分けるかが重要になります。
その財産がプラスなのかマイナスなのか、また、プラスならそれが多いのか少ないのかによって、遺産を分ける際の考え方も変わってきます。
今回は、相続方法に3通りある『単純承認』『限定承認』『相続放棄』について、おさらいしてみましょう。
①単純承認
一般的に“相続”と言われるのが『単純承認』です。プラスの財産(不動産や預金など)であれ、マイナスの財産(借金等)であれ、被相続人の遺産をすべて引き継ぐのがこの方法で、「相続放棄や限定承認などという制度を知らずに何もしなかったため、
または、勝手な処理をしたため、単純承認になってしまった」などのケースもあります。
相続放棄や限定承認の可能性があるのであれば、相続が始まったらすぐに専門家に相談して準備を開始することが重要となります。
②限定承認
遺産として相続したプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続するのが『限定承認』です。
これは「プラスの財産とマイナスの財産、どちらが多いか分からない」「遺産の中に、どうしても取得したい財産がある」などの場合に有効です。
一方、この限定承認は、相続人全員で行わなければならないため、時間と手間がかかります。
また、限定承認をすると“相続財産管理人”が選任され、遺産の調査が行われますが、
相続財産管理人は必ず相続人の中から選ばなければならないため、この点についても事前に調整が必要となります。
相続財産管理人が行うべき手続きに関しては、弁護士等の専門家に委任することができるので、
その場合の処理は弁護士等が行うことになります。
 
③相続放棄
『相続放棄』とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないという方法です。
遺産が明らかに債務超過(プラスの財産よりも、マイナスの財産のほうが多いなど)である場合や、
遠縁の相続であるなどの理由から、相続に一切関わりたくない場合に利用します。
この相続放棄は相続を開始したことを知ったときから3ヶ月以内に裁判所に対して申し立てをする必要があるので、
相続放棄を考えているのであれば、早めに対応することが重要です。
ただし、一定の事情があれば、3ヶ月を経過した場合でも相続放棄を申し立てることができます。
相続案件には、このように「知っている」と「知らない」では大きく違いが出るタイミングや事案があります。
「過ぎてしまった」「知らなかったからしょうがない」とあきらめずに、
相続案件の経験豊富な専門家に相談し、納得のいく対応策を探してください。

 

遺言がある場合の相続手続きは?

2018.10.8
相続対策として『遺言』を残そうとされる方は多くいます。
しかし、死後に相続手続がどのように進んでいくのかを理解しておかないと、意図する通りに財産を残すことができなくなるかもしれません。
今回は、遺言が残されている場合の相続手続きの流れについて、詳しく解説します。
1)自筆証書遺言は検認手続が必要に
被相続人が亡くなった後、自筆の遺言(自筆証書遺言)が存在する場合には、その遺言の発見者や保管者は、家庭裁判所に対して、遺言の検認手続の申立てをしなければなりません。
検認手続は、発見後の遺言書の偽造・変造を防ぐために行われるものであり、家庭裁判所は、遺言書の要旨、筆記用具、内容、日付、署名、捺印の情報を記録します。
遺言書に封がされていても、されていなくても、検認の申立てはしなければなりませんが、封がされている場合には、開封せずに検認を申し立てなければなりません。
開封してしまった場合には、開封した者に対し、5万円以下の過料(行政罰)が科されます。
また、開封した場合、それが間違ってやってしまったものであったとしても、遺言が偽造ないし変造などされたのではないかという誤解が生じ得ますので、相続人の方は注意が必要です。
 
なお、遺言がない(または見つからない)場合には、
当然、法定相続人の間での協議によって遺産分割の内容を定めるということになりますが、
相続人間の協議による遺産分割手続が終了した後に遺言書が発見されたという場合は厄介なことになりがちです。
相続人全員で、それまでの協議に基づく分割内容でよいと合意ができればよいですが、誰か一人でも異を唱えたときには、遺言に基づいて、遺産分割をやり直さなければいけなくなります。
このような可能性もあるので、被相続人となる方は、自筆証書遺言を遺すならば、遺言の存在が明確になるように、信頼できる人に預けたり、保管場所を知らせておいたりする必要があります。
また相続人においては、後々に手続のやり直しということにならないよう、被相続人が亡くなったら、まずは遺言が残されてないかを念入りに確認しておく必要があるでしょう。
2)検認をしなくてもよい公正証書遺言とは?
検認手続が必要なのは、自筆証書遺言を残した場合です。
『公正証書遺言』を残した場合については、検認手続が要求されません。
これは、公証人という法律の専門家が内容をチェックして作成されるため、形式面の審査が不要と考えられるからです。
また、公正証書遺言については公証役場に原本が保管されます。
そして、相続人が被相続人の亡くなった後に公証役場に問い合わせると、被相続人が公正証書遺言を作成しているかどうかを検索してもらうことができ、作成されている場合には、遺言書の謄本の交付を受けることもできます。
そのため、万が一、被相続人の手元にあった遺言書が紛失していたとしても、遺言を確認できるので安心と言えます。
ただし公正証書遺言は、遺産の額に応じた作成費用がかかりますし、公証人の面前で証人2名の立会いのもと作成しなければなりません。
形式的要件を満たせば自分だけで作成ができる自筆証書遺言と比べると、手間もコストもかかるので不便といえば不便です。
なお、先日成立した民法の相続法分野の改正によって、自筆証書遺言の形式に関する要件が緩和されるとともに、自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる制度が創設されました。
そして、この自筆証書の保管制度を利用する場合には、遺言の検認も不要とされています。
改正法は2020年7月までに施行されることになっていますので、改正法の施行後は、この遺言の保管制度を利用することも選択肢の一つになるでしょう。
もっとも、この制度も、第三者によるなりすましなどの防止のため本人が法務局に赴いて手続きをする必要があるなど、一定の手続的負担があります。
また、自筆証書である以上、遺言の内容に法律上の問題がないかについては留意する必要があります。
いずれにせよ、相続の生前対策は、専門家のアドバイスをよく踏まえて行うことをおすすめします。
 

引っ張り続けたその会社、後継者に引き継がせるには?

2018.9.20
 
株式会社の“おひとり社長”が、自分の死後、特定の者に会社の事業を引き継いでもらいたいと考えている場合、                                                    どのような相続対策をしておけば安心でしょうか?
1)株式をすべて相続させるだけでは不十分!?
例えば、「長男を後継者として自分の事業を引き継いでもらいたい」と考えている場合、個人事業主であれば、                                                    事業に関わる全財産をその者に相続させる旨の遺言書を書いておけば、後継者が事業を引き継ぐことができるので、対策としてはこれで完了です。
ところが、株式会社の場合、会社の事業そのものや経営権の相続というものがありません。個人事業の資産とは異なり、                                        株式会社の資産は、それ自体が独立して存在するものとされているからです。そのため、仮に会社の全株式を後継者に相続させたとしても、              その者ができるのは、配当金の請求や株主総会の開催といった株主としての権利を主張することに限られます。後継者が社長になって経営に参加するには、取締役会や株主総会の承認が必要となるため、全株式を相続させても会社そのものを渡したことにはならないのです。
2)他の相続人にも配慮した対策が有効
それでは、「株式会社化はしているものの、実質は個人事業と変わらない“おひとり社長”で、事業を引き継ぐ特定の相続人1人に会社を譲りたい」という場合は、どうすればよいでしょうか?
その場合はまず、遺言書において、「会社の株式全部を後継者に相続させる」旨を定めておくことが必要です。
株式を複数の相続人に分けてしまうと社内で権力闘争などが起こる危険があるため、経営を安定させるためには全株式をまとめて後継者に相続させる方が無難です。
もっとも、「遺産の大半が株式」という場合、全株式を特定の者に相続させると、他の相続人の遺留分を侵害することにもなりかねません。
そのような事態を防ぐには、後継者に対し、社長の生前から株式を贈与しておくか、遺留分を侵害しない程度に過半数以上の株式を相続させる旨の遺言を残しておく対策をしておきましょう。
また、会社の入っているビルやその敷地などの不動産が社長の個人資産である場合、これも後継者に相続させようと考えがちですが、
そのような対策が必ずしも奏功するわけではありません。むしろ、社長の死後に他の相続人の反感を買って“争続”問題が生じてしまい、会社の経営も不安定になる、という事態も散見されます。
このような場合は、あえて個人資産を他の相続人に相続させ、会社から他の相続人に賃料収入が入るようにするなどの工夫をすることで、相続分の減る他の相続人の不満を解消することができます。
3)遺言書の作成・管理がより容易に
現在審議されている民法改正(相続分野)では、自身で作成する遺言書について、
これまではすべて自書しなければならないとされていたところ、相続させる財産を一覧にした財産目録を添付する場合は、
その目録について自書する必要がないとされています。
また、自身で作成した遺言書が紛失したり変造されたりすることを防ぐため、法務局で遺言書を保管することができるようにもなります。
このように、遺言書の作成・管理もますます容易になっていくことをふまえて、今のうちから積極的に相続対策をしておきましょう。
 
 

相続放棄ができるのは3か月以内!? 熟慮期間を延長できるケースとは

2018.8.19
 
前回、遺産の中に借金などの負債が含まれている場合の効果的な対処方法として、“相続放棄”をご紹介しました。
 
ただし、相続放棄をすると負債などのマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も受け取ることができなくなります。
また、手続きに期限があるので注意が必要です。
そこで今回は、相続放棄をすることができる“時期”について詳しく解説します。
相続開始を知ってから 3か月以内が原則!
 
被相続人が亡くなった場合、原則として、3か月以内に相続放棄をするかどうかを決めなければなりません。
その根拠となる条文が、民法915条1項に定められています。
『相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない』。
つまり、“被相続人が死亡したこと”および“自分が相続人であること(※1)”を知ってから3か月以内に
『単純承認』(※2)・『限定承認』(※3)・『相続放棄』のうち、どれを選択するのかを決めなければなりません。
※1 相続人であるか否かは法律で定まるため、その基礎となる事実(被相続人の子であることや、自分よりも順位が上の相続人が相続放棄をしたこと)を知っていること。 
※2 プラスの財産も、借金などのマイナスの財産もすべて承継すること。
※3 相続財産のうち、“負債をプラスの相続財産で弁済(=債務を消滅)することとし(相続人自身の財産で弁済する義務は負わない)、負債などを弁済した後に余りがあれば、その財産を相続する”という留保をつけて相続の承認をすること。
 
3か月以上経っても 相続放棄ができるケースも!
 
 
(1)財産調査が終わらない場合  
被相続人が死亡して自分が相続人であることを知っていたとしても、被相続人の財産が多く、3か月では財産調査ができないといったこともあるでしょう。
そのような場合は、家庭裁判所の手続で熟慮期間(※4)を伸長することができます。
熟慮期間の伸長は民法915条1項ただし書きにて『ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において、伸長することができる』と定められています。
実務的には、熟慮期間は3か月ずつ伸長されますが、1回目の伸長(=3か月分の伸長)は、家庭裁判所がほぼ認めているのではないかと思います。
※4 “単純承認・限定承認・相続放棄のどれを選択するか”などの方針を決めるまでの期間。
 
(2)被相続人の死を知らなかった場合 
前述のとおり、期間の起算時は『被相続人が死亡したこと、および自分が相続人であること』を知った時です。
つまり、客観的に被相続人が亡くなったとしても、そのことを知らなければ、熟慮期間は進行しません。
このように、被相続人の死を後から知ったような場合も、(1)のケース同様、被相続人の死から3か月以上経っていても相続放棄をすることができるのです。
 
(3)特別な事情がある場合 
では、以下の事例のような、相続時に“ない”と思っていた借金が後々見つかった場合はどうなのでしょうか?
【事例】
相続人は、生前の被相続人の生活状況から、被相続人には財産も借金もないと思っていたため、被相続人が死亡した時点では相続放棄をしなかった(※5)。
 
しかし、思わぬ借金があり、請求されてしまった。
相続人からすれば、思わぬ請求を受けたため、支払いたくはないでしょう。
一方、債権者からすれば『相続人が相続放棄をしなかったのだから』と支払いを求めたくなると思います。
 
 
さて、この二者の利害関係をどう調整するかが問題となります。
この点について、昭和59年4月27日最高裁第二小法廷判決(以下、昭和59年判決)は、概ね次のように判示しています。
 
 
『相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である』。
 
 
つまり、以下の(A)(B)の両方を満たす場合には、熟慮期間の起算時を“認識時または認識できたであろう時点”に動かせるということになります。
 
 
(A)被相続人の相続財産がないと信じたこと
(B)(A)に相当な理由がある
 
 
そのため、上記の事例では、昭和59年判決により相続放棄をすることができると思われます。
しかし、被相続人に不動産といった資産があり、相続人が所有権移転登記手続をした後に借金が見つかった場合には、昭和59年判決では救済されず、相続放棄をすることはできないでしょう。
 
 
また、“相続時に知らなかった被相続人の借金の請求”に関して相続放棄ができる期間は、
昭和59年判決によっても『認識時または認識できたであろう時から3か月以内』となるので、注意が必要です。
※5 被相続人の財産を調査してもしなくても、相続放棄することが可能。
 
 
 

財産なのに、相続してはNGなものがある!?

2018.7.27
 
親が亡くなり、相続財産は実家の土地と建物だけ。
「もらえるものは、もらっておくか」と軽い気持ちで相続した結果、とんでもない“お荷物”を背負わされてしまったというケースが最近散見されます。
後悔する前に、“本当にその財産を相続してよいか”をきちんと考えることが重要です。
1)不動産が必ずしも財産とは限らない!?
不動産といえば、プラスの財産の代表格。
現金よりも財産としての評価額を下げることができるため、相続対策としても有用です。
しかし、必ずしもそうとは言い切れない場合もあります。
たとえば、田舎にある古びた一軒家や土地。
不動産なので固定資産税はかかりますし、維持していくためには、家屋の修繕や庭の草刈りに費用がかかります。
マンションの場合は管理費や修繕費が。
売却しようにも、過疎化が進んで地方の土地建物が売れなくなった日本では、なかなか買い手が見つかりません。
このような不動産を相続してしまった結果、不動産の維持・管理にお金が消えていき、次第に生活も回らなくなって借金を重ねてしまうケースが。
さらに、生活保護を受けようにも不動産があるから受けられず、破産しようにも不動産があるから容易にはできない……という嘘のような事例が現実に起こっているのです。
2)“相続放棄”という選択もある
「そんなの、田舎に限った話でしょ?」と安心してはいられません。
高層マンションが立ち並ぶ都市部でも、不動産バブルが崩壊すれば不動産価格の下落は必至です。
また、空き家が社会問題化しつつある昨今、買い手や借り手のつかない不動産の問題は、何も田舎に限った話ではなく、都市部も含めた日本全体が抱える問題なのです。
 
では、どうすればよいのでしょうか。
 
このような事態を避けるためには、親が死んで相続が始まる前に、事前に準備しておくことがとても重要です。
まず、その不動産が売れる見込みがどれほどあるのかを定期的に調べておきましょう。
“昔は買い手がついた不動産も、時の経過とともに買い手も借り手もつかない状態になっていた”というのは、決して珍しいことではありません。
次に、その不動産を維持・管理・処分するのに、どれくらいのコストがかかるかを具体的に試算しておくことも必要です。
仮に、相続財産に金融資産があった場合、それで賄えるかどうか、賄えない場合は自己資産から出せる余力があるかも見ておく必要があります。
不動産ばかりを相続した場合、一見すると多額の財産を相続したように見えますが、それ相応の相続税がかかる上に、その維持・管理コストが結果的に金融資産を食いつぶす、なんてことにもなりかねません。
買い手もつかず、相続財産や手元資金では到底維持していけない不動産が相続財産に含まれていた場合は、最終手段として“相続放棄”という判断を選択すべきです。
 
相続放棄は、相続する財産の全体を放棄する必要があるため、“少しでも得したい”と考える方はなかなか決断できません。
しかし、軽い気持ちで相続した結果、後で泣きを見ないためには、“損切り”する勇気を持つことも、相続対策では非常に重要になってきます。
 
相続について、ご不安なことやご不明点があれば、専門家へお問い合わせください。
 
 

相続争いの代表的主張“寄与分”をご存知ですか?

2018.7.4
 
相続争いの代表的主張“寄与分”をご存知ですか?
 
・相続人たる両親と頻繁に会っていた人とそうでない人
・家業を手伝っていた人とそうでない人
・両親を献身的に看病した人とそうでない人
 
これらの人々が相続人となった場合、相続分は同じ(同額・同割合)でしょうか?
 
上記の問題は“寄与分”という制度に関係します。
今回は、この寄与分の意味や、認められるための要件の概要などをお話しします。
問題が生じる場面とは?
 
まずは、3人の兄弟の会話をもとに、寄与分の主張が生じる場面を見てみましょう。
 
一美:「私は毎週のように実家に帰ってお母さんの面倒をみてたのよ。お母さんが入院した後も頻繁に病院へお見舞いに行って看病してたんだから!             1年に1回も帰って来なかったあんた達と相続金が同じなんて不公平じゃない!」
二郎:「それは、たまたま姉ちゃんが実家の近くに住んでたからだろ。子どもが親の面倒をみるのは当たり前だし、看病したことと相続割合は関係な            いよ!」
三郎:「いや、おふくろは最後までプライドが高かったし、確かに姉ちゃんは大変だったと思う。姉ちゃんの頑張りを無視するのは不公平だよ。だけ            ど俺だって、おふくろが買った北海道のアパートの管理を任されてたんだから、アパートは俺が相続するべきだと思うけど?」
二郎:「それもお前がたまたま北海道に転勤になったからだろ。しかも管理って言ったって、不動産管理業者との事務連絡だけで、ほとんど業者に任            せっきりだったじゃないか。」
一美&三郎:「遊びまわってる二郎には言われたくない!!」
 
一美と三郎が主張しようとしているのは、法律用語でいうところの“寄与分”に関する主張です。
一美と三郎の主張は法的に認められるのでしょうか? 
それとも、自由気ままに生活してきた二郎に分があるのでしょうか?
1)寄与分とは?
では、先ほどから何度か出てきている“寄与分”について、ご説明します。
寄与分とは、民法上に定義規定はありませんが、一般的には『相続財産の維持・増加に貢献(寄与)した相続人の相続分について、他のそうでない相続人よりも優遇しようとする制度』と説明されます。
今回の事例でいえば、“一美と三郎の主張が認められるのならば、二郎よりも優遇して遺産を相続させましょう”という制度です。
では、寄与分が認められるためには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか?
2)寄与分が認められる要件とは?
寄与分については、民法904条の2に規定があります。
同条第1項『共同相続人の中に……被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、……相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする』。
この規定をみると、寄与分が認められるためには、少なくとも以下の3つの要件を満たす必要がありそうです。
(1)相続人の行為が特別の寄与といえること
(2)被相続人の財産が維持又は増加されたこと
(3)寄与行為と財産の維持又は増加に因果関係が認められること(=寄与行為によって財産が維持・増加されたこと)
では、(1)でいう“特別の寄与”とは、どのようなことを指すのでしょうか。
この概念も民法上に定義規定はありませんが、一般的には、『被相続人との身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献を超えるような貢献』と説明されます。
配偶者間や親族間には相互扶助義務があります(民法752、877条参照)。
この義務の範囲内の行為は、通常の相続分で評価され尽くされていると考えられています。
そのため、寄与分の主張を認めさせるには、親族間などで通常期待される扶助行為を超える特別の貢献が求められるのです。
3)今回のケースはどうなる?
上記を踏まえて、各当事者の主張を検討してみましょう。
 
1. 一美について
週に1回、実家に帰って両親と一緒に過ごした程度では、親族間に期待される通常の扶助行為の範囲内と評価され、寄与分の主張は認められない可能性が高いでしょう。
また、実家に帰って両親と一緒に過ごした程度では、両親の財産が維持・増加されたとも評価され難いのです。
もっとも、両親が要介護認定4ないし5程度の認定を受けて介護の必要性が高かったにもかかわらず、業者に依頼せず自身で介護していた場合は、“特別の寄与による財産の維持”が認められる可能性が高くなります。
また、両親の入院後は、専ら病院のスタッフが両親を看護するでしょうから、一美が赴いてフルーツを切ったり、トイレへ付き添ったりした程度では寄与分の主張は認められない可能性が高いのです。
 
2. 三郎について
両親に代わって両親の所有物件を管理していたという主張を聞くと、三郎は両親の財産管理行為を代替した、あるいは両親の事業に従事したといえ、寄与分の主張が認められるようにも思えます。
しかし、三郎が行った行為を具体的に検討すると、不動産管理業者との事務連絡のみであり、自身が不動産管理行為を一手に引き受けたわけではありません。
この場合は、特別の寄与行為と認定される可能性は低いといえます。
また、そもそも不動産管理業者と契約して手数料を支払っているのですから、三郎が手伝ったことで両親の財産が維持・増加したとは評価されない可能性が高いのです。
4)まとめ
道徳的に考えると、二郎は自由奔放に生活し、一美や三郎は両親を手伝っていたのですから、一美や三郎の主張を認めてもいいように思えます。
しかし上述の通り、調停や審判で寄与分の主張を認めさせるには一定のハードルがあり、感情的な主張を繰り返すだけでは寄与分を認定させることはできないのです。
“どのような事情があり、どのような資料があれば寄与分の主張が認められるのか”。
その判断は、個別かつ具体的に行う必要があります。
そのため、寄与分の主張を検討されている方は、専門家に相談することをおすすめします。
 

2020年4月施行予定――相続法改正で何がどう変わる?

昨年、民法の債権法分野の改正がなされ、2020年4月1日から施行されることが決まりました。

もっとも、法務省の法制審議会では、それに引き続き、民法の相続法分野の改正要綱案が既に取りまとめられており、この改正案は今年の国会に提出され、審議を受けることになっています。

では、相続法はどのように変わるのでしょうか? 
今回は、この相続法改正案の概要をご紹介します。 
 
○要綱案の内容とは?

要綱案に掲げられている改正項目は、概ね、以下のようなものです。

(1)配偶者の居住権を保護するための方策
・配偶者居住権(短期・長期)の創設

(2)遺産分割に関する見直しなど
・婚姻期間20年以上の配偶者に対する贈与・遺贈についての持戻し免除の意思表示の推定(筆者注:自宅を遺産に加えない)
・相続預金の仮払い制度(筆者注:遺産分割完了前に一定額を下ろせるようにする) など

(3)遺言制度に関する見直し
・自筆証書遺言の方式の緩和(筆者注:一部パソコンやワープロ書きでも良くなる)
・自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設 など

(4)遺留分制度に関する見直し
・遺留分減殺請求権の効力及び法的性質や算定方法の見直し など

(5)相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し
・相続による権利、義務の承継に関する規律 など

(6)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
・寄与分制度の見直し など

○結局、何が変わるの?

このように改正項目は多岐にわたり、耳慣れない用語も多いと思います。
ここでは、いくつか目立ったものをご紹介します。

まず、“配偶者居住権”の創設です。
たとえば、相続財産の大半が不動産で、預貯金などがあまりない場合、被相続人(亡くなった人)の配偶者が遺産である不動産(自宅)に住み続けたいと思っても、その他の相続人(子など)が法定相続分通りの相続を望んだ場合は、不動産を売却して遺産分割に充てざるをえなくなります。
このような場合に対応するための権利が、“配偶者居住権”です。

また、“自筆証書遺言の方式の緩和”という内容も改正項目に入っています。
現行法では、自筆証書遺言は、その全文を遺言者自身が自分で手書きしなければならないとされています。
しかし、自筆で書くことができない高齢者や、書く力があっても遺産の数が多くて財産の目録が膨大になる場合には、手軽に遺言を残せません(そのような場合、公正証書遺言を作成します)。
“自筆証書遺言の方式の緩和”には、このような不都合を改善する目的があります。

ほかにも、相続預金の取扱いなども改正が予定されています。

昨年、相続預金の取扱いについては、最高裁判所の判例が出されているところでもあるので、それと合わせ、金融実務に与える影響は少なくないでしょう。

○まとめ

今回は、相続法改正要綱案のごく一部を紹介しました。
実際に改正法が施行されるのは、法案が国会の審議を通過し可決された後なので、まだ先の話です。
しかし、改正がなされれば、相続対策や遺産分割手続にも影響が出てくるものと思われるので、念頭に置いていたほうがよいでしょう。

『花咲か爺さん』の遺産が”ポチ”だったら② ―信託制度の利用について―

前回、『花咲か爺さん』の遺産が”ポチ”だったら? という仮定のもとで、お話をしました。

「息子に託すにしても、ちゃんと世話をしてくれるのかどうか……」。
そんな不安に応える策として近年注目されているのが、”信託”という制度の利用です。

第2回の今回は、『花咲か爺さん』の登場人物を例に”信託”について、ご説明していきます。
 
 1)”信託”とは?

“信託”とは簡単にいうと、委託者(この場合はおじいさん)が信頼できる人(=受託者)に財産を移転し、受託者が委託者の設定した信託目的に従って、その財産の管理や処分などを行う制度のことをいいます。

では、『花咲か爺さん』を例に見ていきましょう。
おじいさんは、元気なうちに息子と下記のような”信託契約”を結びます。

まず、おじいさんは息子に対し、
(1)ポチが天寿を全うするまで、お金をきちんと管理すること
(2)ポチの飼育を信頼できる団体などに委ね、飼育状況を管理し、必要な飼育費用を支払うこと
(3)管理しているお金の中からポチの飼育費用を支払うこと
を委託します。
そして、”ポチが天に召されたら、残ったお金を息子が受け取れる”という仕組みにするのです。
 
2)お金の管理とポチの世話を分離する!

この仕組みの最大の”肝”は、お金の管理とポチの世話を分離するところにあります。

おじいさんとしては、”遠く離れた息子が本当にポチの世話をしてくれるかどうか”が心配です。
そのため、ポチについては”息子よりもポチを大切にしてくれる人”に任せた方が安心でしょう。

しかし、その人にポチのためのお金まで委ねてしまっては、お金に気を取られてポチのお世話が疎かになる不安があります。
そこで、お金は息子に委ねて管理を依頼するとともに、ポチが元気なうちは使い込まないよう信託契約で拘束しておきます。
その一方で、ポチが死んで天国でおじいさんと一緒に暮らせるようになった後は、残った財産は息子のものとします。

このようにすることで、息子から見れば”ポチのお世話もお金の管理もきちんとすれば、おじいさんの遺産を手にすることができる”というモチベーションを得られるのです。

3)安心して任せられる人を探しておこう!

しかし、ペットに関する問題で万能策のようにいわれる”信託”でも、越えなければならない壁があります。

それは、ペットの飼育を委託することになる、”信頼できる団体”を見つけることが、現実的になかなか難しいということです。
最近では、動物愛護団体や老犬・老猫ホームが受け皿になってくれることもあるようです。
しかし、
「家族同然に過ごしてきたポチの世話をこれまで何の繋がりもなかった団体に委ねてしまって本当に大丈夫なんだろうか……」
という大きな不安が最後まで残ります。

これは、ペットに関する悩みに限らず、”信託”という制度を利用する際には必ず向き合わなければならない問題です。
「この人に任せておけば大丈夫!」と思える人がいてくれて初めて、”信託”という制度のメリットが最大限の効果を発揮します。

相続対策においては、“メリットとデメリットのどちらも見据えて、遺言や信託などあらゆる制度の利用を考えていくこと”が、とても大切なのです。

『花咲か爺さん』の遺産が“ポチ”だったら① -遺言書だけでは不安?-

「自分が死んだ後、信頼できる人にペットの世話をお願いしたいけど、誰にどう依頼したらいいんだろう……?」

近年、頼れる身寄りがなく、猫や犬といったペットと2人(=1人と1匹)で暮らしている高齢者も少なくありません。
このような方にとって、ペットは家族と同等もしくはそれ以上に大切な存在だといいます。

今回は『花咲か爺さん』にそって、“ペットを遺す際の遺産相続の準備”についてご紹介します。 
 
1)もしもペットを遺すことになったら……?

♪“裏の畑で ポチがなく
正直じいさん 掘ったれば
大判 小判が ザクザク ザクザク”

これは、童謡『花咲か爺さん』の一節です。
『花咲か爺さん』は、心優しいおじいさんが、飼い犬“ポチ”のおかげでお金持ちになる、というお話。
昔話では、ポチは隣に住む欲張りなおじいさんに殺されてしまいますが、童謡ではその辺りが明らかにされていません。

仮に、ポチが殺されず、飼い主のおじいさんよりも長生きした場合、どうなるのでしょうか?
「自分が死んだ後、我が子のように可愛がってきたポチの面倒をちゃんと見てくれる人はいるんだろうか?」
「欲張りなおじいさんに、いじめられたりしないだろうか?」
と、おじいさんは心配で仕方ないでしょう。

2)遺言書だけでは効力がない!?

実は、近年こういった悩みを抱える方が多いようです。
解決策として最初に思いつくのが、“誰か信頼できる人にお願いしてはどうか?”という案です。

仮におじいさんに疎遠になっている息子がいたとします。
しかし、ほとんど顔を見せない息子にポチの世話をお願いしたとしても、本当に世話をしてくれるでしょうか?

では、遺言書を作成し、十分なお金を遺す代わりにポチの面倒を見るようお願いしてみてはどうでしょう。
しかし、これでもまだ、おじいさんとしては不安が残ります。
息子さんがおじいさんの遺言に反し、ポチの面倒を見ず、お金だけ持っていったとしても、ポチを救ってやれるおじいさんは、もうこの世にいません。

ペットの世話というのは、実際にそのペットと一緒に住んでいた人や、ペットを飼ったことのある人でなければ、いざ飼おうと思っても上手くいくとは限りません。

そこで、このような問題を解決する万能策として近年注目されているのが、“信託”という制度の利用です。

信託制度を利用して、どんなことができるのか……?
その肝となる部分は丁寧に解説することが必要なので、次回をお楽しみに!

遺産相続時、兄弟が仲違い……共有持分権のある土地・建物の行方は② ~使用料は請求できる?~

2017.12.24

弟の二郎が兄の太郎に対して怒りをあらわに声を荒げています。
 「オイ兄貴、早く家を売って遺産を分けてくれよ!」

しかし太郎は「俺はずっと親父とお袋と、この家を守ってきたんだ。この家は売らないし、親父達の面倒を看てこなかったお前には一銭も渡さない!」と応えます。
そして、遂に二郎は「そうかい。それなら弁護士を雇って、まずは兄貴を追い出してやる。覚悟しろよ!」と言い放ち、その場を去ってしまいました。
 
前回、被相続人(親父)と同居していた相続人(太郎)に対して、他の相続人(二郎)は遺産たる不動産の明渡しを要求できるのか? 逆に、太郎は家に居座り続けることができるのか? 
という問題に対して、共有者の一人である弟の二郎が「土地と家を明け渡せ!」と要求することはできないと説明しました。
 
二郎は、 「兄貴を追い出せないことは、わかった。だけど俺にも権利があるのに、兄貴だけが使い続けるなんて不公平じゃないか。俺の権利分の家賃を払えよ!」 と言い出しました。
さて、相続した家に住む太郎に対し、二郎は使用料を請求することはできるのでしょうか?
 
 ①問題の設定
問題を単純化すると、先に使用していた太郎だけが得する“早い者勝ちのルール”では、あまりに不公平です。
民法249条にも、『各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる』という限定文言があります。
つまり、太朗の持分(不動産の1/2)を超えた、二郎の持分部分については、何らかの補償がなされるべきなのです。

②原則
では一旦、今回の事案から離れ、原則的な説明をします。
本件のような相続問題ではなく、共有者同士がお金を出し合って不動産を購入した例を想定してください。
この場合、不動産を占有していない共有者は、民法703条の『不当利得の返還義務』により、不動産を占有している共有者に対して、自己の持分に応じた使用料の請求が認められます。
共有者全員が、“共有物の全部”を使用する権利があるにもかかわらず、特定の共有者だけが全てを使用しているのは、他の共有者の利益を侵害し、“使用権限を享受している部分がある”ということになります。
そのため、他の共有者の持分部分について得た利益は不当なものと考えられるので、他の共有者は全部使用している共有者に対して、不当利得の返還請求が認められます。

③本件の特殊性
①②ともに同様の結論となりました。しかし、本件には特殊な事情があります。
それは、太郎が被相続人である親父と長年同居し、親父が亡くなったときも一緒に暮らしていたという事情です。
現在の裁判実務では、この“事情”が最大限尊重されます。

『共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって……遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである』(最高裁判所 小法廷 平成8年12月17日判決参照)。

つまり本件事案に当てはめると、遺産の最終的な所有関係が確定するまでは、『“太朗は遺産である不動産に無償で住み続けてよい”という合意が父親と太郎との間にあった』と推認されるのです。
合意をした父親の地位を二郎も相続しているので、二郎が貸主、太郎が借主の『使用貸借契約』(=無償で使用してよいという契約)が存続します。

④その後の問題
今回の検討では、二郎は太朗に対し「出て行け」とも「使用料を払え」とも主張できない結果となりました。
そのため、太朗はこのまま遺産を使用し続けられますが、二郎は諦めるしかないのでしょうか?

この先はまさに弁護士の出番ですので、法律相談に行かれることをおすすめします。
お困りになっているあなたの代わりに、速やかに遺産分割協議を始めます。

 

遺産に不動産が含まれる場合、どう遺産分割する?

相続手続きでは、遺産の多寡や不動産が含まれているかどうか、あるいは相続人の人数や相続人同士の関係によって、どのように遺産分割を行うのかが大きく変わってきます。

 
ここでは、遺産の中に不動産が含まれる場合の3つの遺産分割方法について、説明していきたいと思います。

 

相続人はABCの3人とします。

 

1.現物分割

「現物分割」は、3つの分割方法の中で最も一般的な分割方法です。
甲不動産はAが、乙不動産はBが、預貯金はCが相続するといったように、「現物」で分けることをいいます。

しかし、現物分割の場合、それぞれ相続するものの価値を同一とすることが難しい、というデメリットがあります。預貯金がある程度あれば良いのですが、遺産が不動産のみの場合、全てが同価値ということはまずないので、厳密に平等にはならないことが多いのです。

2.換価分割

相続財産を現金に換金した上で、金銭でそれぞれ分配する方法です。
ケースバイケースではありますが、遺産が甲不動産のみだった場合、現金化して相続人3人で分配するという、この方法が、全員が納得することが多いです。

具体的にはどうすればいいのでしょうか?

(1) 相続人ABCのうち、手続き上、一旦Aのみ所有者とする相続登記を行い、それから売却する
(2) 相続人全員名義で相続登記を行い、それから売却する

といった2方法があります。

(1)の場合、Aのみの名義にしますので、遺産分割協議書で、売却後の代金を3人で分配する旨を記載しておく必要があります。
必ず、司法書士や税理士など専門家に相談してから行うようにしましょう。

なお、不動産の売却には時間と手間がかかりますので、それがこの方法のデメリットといえるでしょう。

3.代償分割

「代償分割」とは、Aのみが甲不動産を相続する代わりに、BとCへ相続分に応じた現金を支払うことをいいます。
例えば、甲不動産に6000万円の価値があった場合、AはBとCへ2000万円ずつ支払うことになります。

この場合、Aには手持ちの現金がなければなりませんので、なかなか難しいことが多いです。
 
4. まとめ
不動産が含まれるケースでの分割方法について書いてきましたが、実際には、不動産を3分割して現物分割をしたり、現物分割と代償分割を併用したりといったように、さまざまな様態があります。

遺産分割協議時には、ぜひとも専門家へ事前に相談するようにしましょう。

もしも「わらしべ長者」の長者さんに息子がいたら…!? 相続対策は今そこにある危機

「父さんも母さんも元気だし、我が家ではまだまだ先の話…」
なんて、高をくくってはいませんか? 

相続問題は“争族”問題。
今、そこにある危機だと捉えて対策しておくべきです!
 
 1)「わらしべ長者」は“争族”問題のはじまり!?

昔々、あるところに、正直者だが貧乏な男が住んでいた。この男、観音様のお告げにしたがい、一本の藁を使って、最終的には長者さんのきれいな娘さんと全財産をもらったとさ。めでたしめでたし。
「わらしべ長者」のハッピーエンディング。

ところで、仮にこの長者さんに息子さんがいた場合、この話はハッピーエンドで終わったでしょうか?

息子さんからすれば、長者さんの家系で代々受け継がれてきた財産を、突如出現したどこの馬の骨ともわからない男にすべて持っていかれたわけですから、さぁ大変。

“父さんも、こんな男に全財産をあげるなんて、呆けてしまったのだろうか…こんなことなら、事前に我が家の財産をどうするか話し合っておけばよかった…”と、さぞかし後悔したことでしょう。

しかし、こうなってしまってはもう、後の祭りです。

…と、有名な昔話を取り上げてみたのは、歴史の“if”がおもしろいからというわけではなく、これと似たようなご相談を受けることがよくあるからです。

「父が、素性の知れない第三者の口車に乗せられて、いつのまにか自宅を売ってしまっていて…」
「母が、気づかないうちに預金を引き出して、電話をかけてきた『オレだよ、オレ』と名乗る男に言われるがまま振り込んでしまって…」

こうなってしまうと、周囲が気づいてからではもう遅い、というケースがほとんど。
手の打ちようがなく、何もできないのです。

2)“晴天の霹靂を予防するための相続対策”の重要性

このような事態を招く最大の原因は、家族や会社で築き上げてきた財産を、今後どう管理し、将来に残していくかをよく話し合っておかずに放置した点にあります。

高齢になっていく父や母に財産の管理を任せっきりにしておくと、気づいたときには2人とも判断能力が衰え、財産を散逸している…ということは、決して他人事でもなければ、昔話の世界の話でもありません。

特に日本人は、両親が存命のうちに亡くなった後の話をすることをタブー視する風潮があるせいか、両親の死後、相続人間で遺産をめぐって大いに争う「争族問題」が勃発するケースが非常に多く見られます。

そのほとんどは、事前に関係者同士で話し合いをしていれば防ぐことのできたトラブルばかりです。

「わらしべ長者」の長者さんのご子息のようなことにならないよう、ぜひ “トラブルを予防するための相続対策” に目を向けてみませんか?

「相続対策」といえば相続「税」対策を考える方が多いですが、親族間のトラブルを防ぐ予防策として考えることの重要性が、昨今ますます高まっています。

そして、このようなトラブルを事前に防ぐ最善かつ最先端の方法として最近注目されているのが、「民事信託」という制度の利用です。

3)判断能力が衰えても財産所有者の目的通りに管理・処分ができる

「わらしべ長者」の長者さんは、「自分の判断能力が衰えたら、財産が散逸してしまうのでは」と心配していました。
そこで何か手は打てないかと考え始め、たどり着いたのが今話題の“民事信託”という制度だったのです。

民事信託とは、財産を持っている方(長者さん)が信頼できる家族に財産を託し、目的に従って管理・処分してもらう制度です。

長者さんは、「代々受け継がれてきた長者一家の財産を将来にわたって引き継いでいく」ことを目的として、息子さんに財産の管理・処分をするようにお願いしました。
ただし、財産から生じる利益(例:長屋の店賃)などは、引き続き長者さんがもらい、隠居後の生活費に充てることにしています。

まだ若い息子さんに全財産を託してしまうと、「息子さんが慢心して、財産を食い尽くしてしまうのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、民事信託にその危険はありません。
なぜなら、息子さんは長者さんが定めた目的に従って、財産を管理・処分する義務が課せられるからです。

すなわち、長者さんが定めた「代々受け継がれてきた長者一家の財産を、将来にわたって引き継いでいく」という目的から外れた財産の使い方を、息子さんはできないのです。

民事信託を活用することは、息子さんに家業を継いでもらうための事前準備にもなり、店賃などの利益を引き続きもらう長者さんにとっては一石二鳥どころか三鳥、四鳥のうまい話となります。

4)息子さんは財産が奪われるのを防ぐことができる

今度は視点を移して、息子さんの立場に立って民事信託を見てみましょう。

「長男だから」という理由だけで、息子さんは代々受け継がれてきた財産を押し付けられ、目的にそって管理・処分をしなければいけないという義務を課せられました。
この義務に違反すると、損失を補填する義務を課されるケースもあります。
息子さんからすると、財産から生じる利益を得られないにもかかわらず、重い義務だけ課されている形です。

ただ、民事信託は息子さんとってデメリットばかりではありません。
「争族問題を予防できる」というメリットもあるのです。

たとえば、「わらしべ長者」の主人公のような男が突如現れ、長者さんの財産が奪われそうになったとしても心配ありません。
財産はすでに息子さんの手の中にありますから。

5)不動産所有者は民事信託を活用すべき!

相続で最も相談が多いのは不動産に関する問題です。

高齢になった長者さんが病で倒れ、判断能力が急に衰えてしまった場合、長屋を処分して長者さんの治療費を捻出することはできません。
家族とはいえ、息子さんが長者さんの財産を勝手に処分することは許されないからです。

でも民事信託をしていれば、長屋を管理・処分する権限は息子さんにあり、目的にそう範囲で長屋の処分を検討できるのです。

6)民事信託は相続税対策にはつながらない

ここまでメリットについて述べてきましたが、民事信託のデメリットはあるのでしょうか?

1番大きいデメリットは、特に節税効果がなく、相続「税」対策にはならない点です。
また、制度が少し複雑で、多くの関係者を巻き込むことも頭に入れておかなければいけません。

相続問題は事前に関係者で話し合っていれば、防げるトラブルが多くあります。

相続トラブルの予防と考え、制度の申請が多少複雑だったとしても民事信託を利用してみてはいかがでしょうか。

遺産相続時、兄弟が仲違い……共有持分権のある土地・建物の行方は!

弟の二郎が兄の太郎に対して怒りをあらわに声を荒げています。
「オイ兄貴、早く家を売って遺産を分けてくれよ!」

しかし太郎は「俺はずっと親父とお袋と、この家を守ってきたんだ。この家は売らないし、親父達の面倒を看てこなかったお前には一銭も渡さない!」と応えます。
そして、遂に二郎は「そうかい。それなら弁護士を雇って、まずは兄貴を追い出してやる。覚悟しろよ!」と言い放ち、その場を去ってしまいました。
 
 【問題の設定】

事案を単純化します。
お母様はずっと昔に亡くなられていて、お父様も最近亡くなられました。相続人は2人(兄弟)だけで、遺産はご両親と長男の太郎が暮らし続けてきた土地・建物だけという設定にします。

さて、このような状況で二郎の狙いは成功するのでしょうか。

今回の事例には様々な問題点が存在しそうですが、被相続人(親父)と同居していた相続人(太郎)に対して、他の相続人(二郎)は遺産たる不動産の明渡しを要求できるのか? 逆に、太郎は家に居座り続けることができるのか? という問題に限定して考えてみようと思います。

【解答】

まず、被相続人が死亡し相続が発生すると、被相続人の財産(遺産)は、各相続人の共有状態におかれます(民法898条)。

つまり、今回の土地・建物は、“太郎と二郎が2分の1ずつ共有持分権を有している”という状態におかれます。
今回の事例では、二郎も2分の1の共有持分権を有しているにもかかわらず、太郎が土地・建物(遺産)を独占してしまっているのですから、二郎は太郎を退去させることができそうにも思えます。

しかし民法249条は、「各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と規定しています。
即ち、当該共有物の共有持分権を有するものは(持分に応じたという限定文言はあるものの)当該共有物の全部を使用することができるのです。

よって、本件の遺産である土地・建物の共有持分権を有している太郎が、土地・建物の全部を独占していても、これは正当な使用権限の行使の範囲内であり、二郎の太郎に対する建物明渡請求等は認められないという結論になります。
なお兄弟(相続人)が3人いたとして、太郎の持分が3分の1に過ぎない状況で、他の2人の相続人から明渡請求等をされた場合でも、この結論は変わりません(最高裁判所昭和41年5月19日判決参照)。
とにかく、一部でも共有持分権があれば共有物の全部を使用することができるという決まりになっているのです(一部例外はありますがここでは割愛します)。

【さらなる問題】

では、二郎は太郎に対してお金を請求することはできないでしょうか。
二郎にも共有持分権があるにもかかわらず、太郎だけが独占するのは不公平ですから、二郎にはせめて金銭を補償すべきと考えられますね。

沖縄ならでは!「軍用地」を活用した相続の節税対策がアツイ!

相続税の節税方法のひとつとして注目されているタワーマンションですが、2017年度の税制改正でタワーマンション節税に対する規制が厳しくなってしまいました。

そこで新たに注目が集まっているのが、沖縄ならではの「軍用地」を活用した節税方法です。

一体どのような節税方法なのでしょうか?
 
 軍用地の借地料は年々上がっている!

沖縄には米軍の基地があることは有名です。
その米軍基地として使われている土地を「軍用地」と呼び、個人や法人の所有地を政府(防衛省)が借地契約を結んで借り上げています。

政府と沖縄県軍用地主連合会によって決められた借地料に則って、政府は年に1回、地主にまとめて借地料を支払っています。

軍用地は政治的な問題が起こりやすいので、現在のところ毎年借地料は上がっています。

国債同様、軍用地はいつでも現金化できる

「所有者が自由に軍用地を売買できるのか」と疑問に思う方がいるかもしれません。
軍用地は自由に売買することが可能で、普通の土地と同じように公図もあります。

ただし、軍用地には住居を建てられませんし、立ち入ることすらできません。

現在のところ、軍用地は半永久的に政府から返還されない可能性が高いといわれています。
言い換えれば半永久的に借り手が決まっている土地ということです。

政府が借地料を半永久的に保証していることから、国債と同様で非常に信用度が高く、いつでも現金化できる土地として非常に人気のある資産です。

軍用地の取引価格は需要によって決まる

軍用地の取引価格は、年間借地料に倍率を掛けることで市場価格が決まっています。
坪単価は関係がありません。
たとえば年間借地料が300万円の軍用地で、倍率が40倍だった場合は、1億2000万円となります。

倍率は需要によって変化します。
需要が高いのは「返還の見込みがない場所」で、反対に倍率の低いのは「返還の見込みがある場所」といわれています。

軍用地の相続税評価額

軍用地は公用地として評価しなければいけません。公用地には地上権割合が設定されます。地上権割合は40%で、この部分は借り手が負担するものとして計算されます。

相続税評価額は次のように計算されます。

相続税評価額=固定資産税評価額×公用地の評価倍率×(100%-40%)

たとえば、固定資産税評価額が3000万円で、公用地の評価倍率が1.8倍だった場合。
3000万円×1.8×(100%-40%)=3240万円となります。

相続税評価額が3240万円の軍用地が年間300万円の借地料を生み、市場取引価格の倍率が40倍である場合、前述した通り取引価格は1億2000万円です。

このように相続税評価額と実際の取引価格に大きな開きがあるので、節税効果が高いというわけです。
また、アパートやマンションの賃貸経営と異なり、半永久的に借り手が決まっているところも魅力のひとつです。
唯一の問題は、人気が高い土地なのでなかなか市場に出回ることがないところです。

軍用地を得意とする不動産会社に依頼するか、沖縄の新聞広告を地道に調べてみましょう。

 

あなどってはいけない! 中小企業の相続・承継にも争いの火種はある

会社の相続問題が「お家騒動」としてテレビで騒がれることがたまにあります。

「跡継ぎをちゃんと決めているから」
「そんなたいした会社じゃないから」
と思って、あまり気にしていない方はいませんか?

しかし実際は、会社の規模にかかわらず、相続・承継で“騒動”が起きてしまう可能性があります。
 
 遺言を残したからといって安心はできない

具体例を挙げながら、相続・承継の問題点を見ていきます。

・会社の株も財産も長男にすべて継いでもらうよう、遺言書に残している
一見、経営者の死後は長男が全権を握れ、うまく承継ができそうです。
しかし民法には、「遺留分」という制度が定められており、遺言で財産をもらえないとされた長男以外の相続人は、法定相続分の2分の1にあたる金額を長男に対して請求できます。
遺留分を度外視してすべての財産を1人が相続すると、ほかの相続人から遺留分請求をされ、争いにつながる可能性が高いのです。

・生きているうちに株式をあげる(贈与する)
特定の相続人の「特別受益」として、株式の価値を遺産に含めて計算する場合があります。
また、譲渡の仕方によっては贈与税が多額にかかってしまうので、贈与の方法自体にも工夫が必要です。

大企業よりも中小企業の方が争いの火種は多い?

「大企業だから『お家騒動』が起こる」と思っているのは危険です。

遺産に会社の株式がある場合、遺産分割や遺留分請求の手続をする際に、株式の金額を算定します。
非上場株式は上場株式のように市場価格が明確でないので、価格評価で揉めることが多いのです。

また、株式に価値がほとんどない場合でも安心はできません。
株式の保有数が経営権にかかわります。
経営権を取りたい相続人がいると、価値がほどんどない株式に値段をつけて売ろうとする相続人が現れる可能性があるのです。

以上の点を見ると、上場している大手企業よりも中小企業の方が相続で揉める可能性が高いといえます。
 
争いを起こさずに会社を承継するには、長期的な視点を持って対策を立てなければいけません。

長年尽くしてくれた部下に会社を譲りたい場合は、子どもに相続するときよりも準備と根回しに時間と労力がかかります。

「まだまだ現役だから、会社の相続・承継はまだ先の話だ」と思っている方。
そんな悠長なことを言っていられない状況は、すぐそこかもしれません。

その遺言書、本当に大丈夫? 「遺言能力」について知っておこう

相続手続きを円滑に行いたいとき、あるいは自分自身の遺志をしっかり遺しておきたいという場合に、よく使われるのが遺言書です。
最近は、テレビや書籍でも取り上げられる機会が多くなり、以前にも増して身近な存在になりつつあります。

一般的に、遺言書を作成する人は高齢者が多いものです。
認知症と明確に診断されていなくても、「物忘れが増えた」「理解に苦しむ行動が目につくようになった」というような「グレーゾーン」の高齢者も少なくありません。
そうなると、親族間で「遺言書は本当に有効なのか?」といった疑問がわいてくるでしょう。
今回は「遺言能力」について、解説します。

■「遺言能力」とは?
「遺言能力」とは、「遺言がどのような意味を持ち、どのような法的効力を発揮するかを理解できる能力」を指します。

遺言者は満15歳以上で、遺言書を作成する際に意思能力を有していれば、誰でも遺言をすることができます(民放961条)。
したがって、認知症で意思能力がなければ、その遺言書は無効ということになります。

ただ、認知症や高齢によって判断能力が低下しているからといって、必ずしも遺言が無効となるわけではありません。
高齢者が遺言書を作成する際は、後日トラブルとなるのを防ぐため、医師の診断書を取得し、医学的に判断能力に問題がないことの証明書として残しておくことをお勧めします(ただし、医師の診断書があるからといって、必ず遺言書が法的に有効となるわけではありません)。

■「被補助人」「被保佐人」「成年被後見人」の遺言作成はどうなる?
自己の財産管理に関して、援助を要する場合がある「被補助人」や、常に援助が必要な「被保佐人」が遺言書を作成する際、特に制限は設けられていません。
一方、自己の財産管理ができない「成年被後見人」が遺言書を作成する場合は、意思能力を欠く状況にあることから、特別な規定が設けられています。

成年被後見人といえども「全然話を理解していないと思っていたら、突然理路整然と話し始めた」というように、一時的に意思能力が回復することがあります。一時的に意思能力が回復した場合に、医師2人以上の立会いの下、遺言書を作成することができます。

高齢で、判断能力が疑われる状態での遺言書の作成は、慎重な対応が求められます。
できるだけ、元気なうちに遺言書を作成することで、相続対策を円滑に進められるのです
 

遺言書を発見したらどうする?

今回は、遺言書を発見した場合にどのようにしたらよいのかを説明していきます。

よくテレビドラマなどで、弁護士が相続人の集まった席で遺言書を読み上げるシーンなどがありますが、実際の手続きはどうなっているのでしょうか?

■家庭裁判所で検認の手続きを行う

遺言書を生前に預かっていたり、死後に発見した場合には、すぐに中身を知りたい気持ちは理解できますが、絶対に開封してはいけません。

まずは家庭裁判所で検認の手続きを取りましょう。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、検認という手続きを行わなければなりません。

一方、公正証書遺言については、検認手続きが不要です。公正証書遺言は公証人が証人2人の立会いの下で作成しており、詐欺、脅迫、偽造、変造の恐れが少ないからです。

■検認の手続きをしなければならない者
遺言書を保管している者や遺言書を発見した者は、相続開始後遅滞なく、家庭裁判所に検認の手続きを取る必要があります。

検認の手続きは義務規定です。もし、検認の手続きを取らずに遺言を執行したり、遺言を勝手に開封してしまった場合には、5万円以下の過料に処せられるので、注意が必要です。

■検認手続きの流れ
検認の申立を行うと、家庭裁判所から検認の手続きを行う日が、申立人と相続人に通知されます。

遺言書を持っている者は、遺言書を持参してその期日に家庭裁判所に行きます。そして裁判所は、申立人や相続人の立会いの下、遺言書を開封します。

■検認の効力
自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認の手続きを取ることが必須です。

しかし、検認の手続きをしたからといって、遺言書の効力に影響するわけではありません。

遺言に偽造された可能性がある場合は、遺言無効確認の訴えを起こすなど、遺言の有効性を争っていくことができます。

以上のように、公正証書遺言以外の遺言では、「検認」というひと手間が必要となってしまいます。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、親族間の争いへと発展するケースが多いです。

できるだけ公正証書遺言にて遺言を作成することが望ましいでしょう。

 

「死後事務委任契約」って何?

少し前に「終活」という言葉がはやりました。

「終活」とは、死後遺された家族に負担がかからないように、自分自身を見つめ直しながら生前のうちから葬儀などの事前準備することを指します。

「終活」の1つとして挙げられるのが「死後事務委任契約」です。

以前は弁護士や司法書士などの専門家しか「死後事務委任契約」という言葉は使いませんでしたが、最近では一般の人も使うようになってきました。

死後事務委任契約とは、葬儀や埋葬、死後に関する諸手続きに関する事務を委託する契約を指します。

この委託を受けた者が、委任者の死後に各種事務手続きを行います。

死後事務委任契約は、次のような方が利用するケースが多いです。

・自分が死亡した後、親族に煩雑な相続手続きをさせたくない
・親族が遠方に住んでいる
・親族がいない
・親族と疎遠
・葬儀方法などを自分の希望通りにしてもらいたい

「自分が死んだ後は別にどうなっても関係ないや」と考えている人は少なく、事前にできることはやっておきたいという思いを持っている方が多いことが、死後事務委任契約のニーズの高まりを後押ししています。

死後事務を委託された人は、具体的に次の手続き等を行います。

・役所への死亡届の提出
・遺品の整理
・自宅の明け渡しや処分
・葬儀、埋葬、永代供養に関する手続き
・年金に関する手続き
・電気、水道、ガスに関する手続き
・親族や友人への通知

たくさんの手続きがあり、上記以外にもSNSアカウントの抹消など、細かいことまで委託できます。

遺言書を作成する場合と同様に、一人ひとりの状況に合わせて、委任契約の内容を決められます。

死後事務委任契約をする際、最も重要なのが「誰に」お願いするかです。

受任者として預かった団体が、多額の預託金を他に流用して破たんしたというニュースもあります。

お願いする相手には制限がなく、誰と契約してもよいのですが、できれば弁護士や司法書士など、ある程度信頼性が担保されている専門家のほうが安心です。

死後事務委任契約は、遺言書ほど浸透していません。

しかし、死後事務委任契約書があることで、煩雑な手続きで遺された家族を煩わせなくて済み、遺言書で伝えきれない遺志も伝えられるので、遺言書とセットで作成する人もいます。

相続対策の選択肢の一つとして覚えておいて損はないでしょう。

 

その遺言書、本当に大丈夫? 「遺言能力」について知っておこう

相続手続きを円滑に行いたいとき、あるいは自分自身の遺志をしっかり遺しておきたいという場合に、よく使われるのが遺言書です。
最近は、テレビや書籍でも取り上げられる機会が多くなり、以前にも増して身近な存在になりつつあります。

一般的に、遺言書を作成する人は高齢者が多いものです。
認知症と明確に診断されていなくても、「物忘れが増えた」「理解に苦しむ行動が目につくようになった」というような「グレーゾーン」の高齢者も少なくありません。
そうなると、親族間で「遺言書は本当に有効なのか?」といった疑問がわいてくるでしょう。
今回は「遺言能力」について、解説します。

■「遺言能力」とは?
「遺言能力」とは、「遺言がどのような意味を持ち、どのような法的効力を発揮するかを理解できる能力」を指します。

遺言者は満15歳以上で、遺言書を作成する際に意思能力を有していれば、誰でも遺言をすることができます(民放961条)。
したがって、認知症で意思能力がなければ、その遺言書は無効ということになります。

ただ、認知症や高齢によって判断能力が低下しているからといって、必ずしも遺言が無効となるわけではありません。
高齢者が遺言書を作成する際は、後日トラブルとなるのを防ぐため、医師の診断書を取得し、医学的に判断能力に問題がないことの証明書として残しておくことをお勧めします(ただし、医師の診断書があるからといって、必ず遺言書が法的に有効となるわけではありません)。

■「被補助人」「被保佐人」「成年被後見人」の遺言作成はどうなる?
自己の財産管理に関して、援助を要する場合がある「被補助人」や、常に援助が必要な「被保佐人」が遺言書を作成する際、特に制限は設けられていません。
一方、自己の財産管理ができない「成年被後見人」が遺言書を作成する場合は、意思能力を欠く状況にあることから、特別な規定が設けられています。

成年被後見人といえども「全然話を理解していないと思っていたら、突然理路整然と話し始めた」というように、一時的に意思能力が回復することがあります。一時的に意思能力が回復した場合に、医師2人以上の立会いの下、遺言書を作成することができます。

高齢で、判断能力が疑われる状態での遺言書の作成は、慎重な対応が求められます。
できるだけ、元気なうちに遺言書を作成することで、相続対策を円滑に進められるのです。

 

未登記建物の相続手続きはどうすればいい?

相続の手続きをする際には、不動産を確認するため登記事項証明書を取得して、現在の登記上の権利関係を把握します。

その中で、相続人が建物の登記事項証明書を取れないことがあります。固定資産評価証明書を取得してみると、課税の対象にはなっているものの、「未登記」と記載されていることがあります。

では、この未登記建物の相続手続きはどのように行えばよいのでしょうか?

■所有権取得後1ヵ月以内に「表題登記」を申請
まず、大原則として建物の所有権者は、所有権取得後1ヵ月以内に「表題登記」を申請しなければならないと不動産登記法で定められています。

そして、この表題登記とは、所在、地番、地目、床面積等の建物の物理的状況を公示する登記を指し、権利に関する登記の前提として行われるものを言います。

しかし、この表題登記をせずに放置されている建物は少なからず存在します。なお、表題登記をしていないからといって、固定資産税が掛からないということはなく、市町村役場はしっかりと所有者を把握しています。

ちなみに表題登記を、所有権取得の日から1ヵ月以内にしておかけなければ、過料の制裁があります。

この未登記建物を誰が相続するのか決まったら、その相続人名義で表題登記を申請します。表題登記は土地家屋調査士の分野ですから、土地家屋調査士に依頼することになります。

また、表示登記の後には「保存登記」というものを行います。これは所有権の登記のない不動産について初めてなされる所有権の登記を指します。

そして、この保存登記の業務は司法書士の分野ですから、司法書士に依頼することになります。

■未登記建物を取り壊す場合は「家屋滅失届」を提出
未登記建物が老朽化していて取り壊す場合には、「家屋滅失届」を市町村に提出します。登記している建物の場合は、法務局へ滅失登記を行えば足り、家屋滅失届の提出は必要ありません。

また、相続後も未登記のままで所有する場合には「未登記家屋所有権移転届」を市町村へ提出することになります。これは、固定資産税の納税義務者が誰かを役所が把握するために行います。

以上のように、未登記建物を相続した場合、さまざまな手続きをしなければなりませんので、ご注意ください。

 

相続でよく聞く「遺留分」とは?

不動産の相続でよく聞くけれど、イマイチよく分かっていないという用語が皆さんにもあるでしょう。

今回はそんな用語の中から「遺留分(いりゅうぶん)」についてご説明したいと思います。
本来、財産をどのように処分するかは、本人の自由というのが大原則ですが、相続人の間での公平を図る制度もあります。それが「遺留分」制度です。

財産は生きている間は当然のこと、死亡した後の処分方法についても自由に決めることができます。

代表的なところでいうと、死亡した後の処分は、遺言によって行うことが可能です。遺言は遺言者自身だけが作成でき、相続人の意見を考慮する必要はありません。

しかしながら、相続人の法的安定性にも一定の配慮が必要であり、遺言による財産処分には何ら制限がないというわけではないのです。

例えば、被相続人である男性が土地と建物を所有して、妻と一緒に住んでいたとしましょう。

男性が「土地と建物を愛人に遺贈する」旨の遺言書を作成して亡くなった場合、土地と建物は、遺言通り愛人のものになります。

場合によっては、妻は家から出て行かなければなりません。

また、住み続けるにしても、その対価を愛人に支払わなければならないケースもあります。

住所は生活の基盤となるインフラですから、そこを失うことになったら、妻は著しく酷な状況に置かれてしまいます。人情的に考えても、多くの人が妻の肩を持つでしょう。

そこで、出てくるのが遺留分制度です。被相続人である男性は、相続人である妻のために一定の相続財産を留保しておく必要があります。

また、この留保された相続財産を愛人によって侵害された場合、妻はその分を取り戻すことができるのです。

この取り戻す権利のことを「遺留分減殺請求権(いりゅうぶん・げんさいせいきゅうけん)」と言います。あくまで権利ですので、この権利を行使しなくても構いません。

■遺留分を主張できる者と遺留分の割合
遺留分を主張することができる者は、「配偶者」「子」「直系尊属」だけで、兄弟姉妹は含まれていません。

【遺留分割合】
直系尊属のみが相続する場合…相続財産の1/3
上記以外の場合…相続財産の1/2

■遺留分減殺請求の期間制限
遺留分減殺請求権は、遺留分減殺請求することができる者が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったときから、1年で時効消滅します。

この遺留分減殺請求権は、強行法規であるものの、法的安定性の観点からは、かなり短い時効期間となっています。

時間的な側面からも、権利を行使する人と、される人との利害の調整も図られているわけです。

ポイントとしては、誰が遺留分の権利を行使できるのか、その割合と期間について覚えておきましょう。

 

相続対策として生命保険を利用する4つのメリット

相続対策は、「不動産を利用する」「毎年110万円ずつ生前贈与する」「養子縁組をする」など、さまざまな方法があります。

そのなかに「生命保険を使った相続対策」もあります。

「保険」と聞くと、結構強引なセールスや、契約時はわかったつもりでも、後々何の契約をしたのか覚えておらず実態がよくわからないことから、マイナスのイメージを持っている方が多いかもしれません。

しかし、生命保険を使った相続対策は、複雑な内容ではありません。

メリットこそあれ、デメリットはほとんどないといってよいでしょう。
生命保険が相続対策として、どんなメリットがあるのかについてご説明します。

1.相続財産が少なくなる
生命保険料を支払うことで、単純に相続財産が減少します。よって、相続税を支払うケースでは、税額も減少することになります。

2.死亡保険金の「非課税限度額」を活用できる
生命保険の死亡保険金は相続税の対象となりますが、残された家族の生活を保障するという重要な意味合いもあります。

そこで「非課税限度額」というものが設けられており、「500万円×法定相続人数」が非課税限度額となります。

この金額を超えた部分についてのみ、相続税の対象となります。

なお、契約者と被保険者が同一で、かつ死亡保険金の受取人が法定相続人である場合に限られます。

3.死亡保険金は原則遺産分割の対象外
死亡保険金は受取人固有の財産となるため、原則として遺産分割の対象とはなりません。

そのため遺産分割協議を必要とせず、「この人にはお金を遺しておきたい」という希望をかなえることができ、相続人の間のトラブルを防いでくれます。

4.すぐに現金化できる
被相続人が死亡すると、故人の口座は凍結されてしまいます。戸籍の収集や遺産分割協議書など、さまざまな書類を準備しなければ実質動かすことができません。

しかし生命保険による死亡保険金は、当然現金で受け取ることができます。葬儀費用などまとまった現金が必要となる場合に役立ちます。

今回は節税目的だけでなく、「円滑な相続を実現する」という観点で「生命保険と相続」というお話をしました。経営者の皆様や資産家の方は、ご利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

相続人の中に未成年者がいるケース

不動産業者の方が避けて通れないものの一つが「相続」です。売主さんから、「相続した土地を売りたいけど、名義はまだ亡くなった父親のまま」と言われるケースは、よくあるのではないでしょうか。

このような場合、売買の仲介をする前提として、相続手続きを完了させておかなければなりません。

これがなかなか大変で、労力に比して利益も少ない場合には、敬遠してしまう営業マンが多いかと思われます。

すぐに相談できる専門家のネットワークを構築しておくことはもちろん大切ですが、専門家につなぐまでのある程度の知識は必要です。

そこで、今回は、相続人の中に未成年者がいるケースをご説明します。
父親、母親、未成年の子供2人の家族で見てみましょう。父親が住宅ローンを組んでマンションを購入しており、父親が亡くなったとします。そのマンションは、法定相続分でいけば、母親が2分の1で、子供が4分の1ずつとなります。

しかし、実際はマンションの管理や税金の支払いなどは母親が行うので、通常は、遺産分割協議を行って、母親の単独名義にするケースがほとんどだと思います。

ここで、「未成年者が遺産分割協議を行うことができるか」という問題があります。未成年といっても、しっかり分別のつく19歳も未成年ですし、生まれたての赤ちゃんも未成年者です。

法律では、一律未成年者がいる場合には、家庭裁判所に「特別代理人」という人を裁判所に選任してもらい、その人が未成年者の代わりに遺産分割協議を行う、という決まりになっています。

なぜ、こんなことをする必要があるのでしょう。未成年者の場合、法律行為は親権者である母親が代わりに行います。

しかし、今回の遺産分割協議の場合、母親が未成年者に代わって話し合いといっても、実質は母親ひとりになってしまいます。

母親は自分が好きなように決定することができてしまいます。そうすると、母親と子供たちで利害の対立が生じます。これを「利益が相反する」といいます。

これでは、正しい遺産分割協議を行うことはできないので、公正な「特別代理人」が変わりに行うことになるのです。

この特別代理人は裁判所が選任することになります。選任の申立をする際、候補者を挙げることができますので、親族や弁護士、司法書士を候補者として挙げることが可能で、通常2週間程度で選任されます。

相続人に未成年者がいると、手続きとしては余計にひと手間かかり、「特別代理人」の選任が必要となるということを覚えておくとよいでしょう。

 

不動産を信託すると、どのように名義変更されるのか?

家族信託や民事信託の設定によって、不動産を信託財産に加える場合には、登記簿(登記事項証明書)に「受託者」の名前が、管理処分者権限者として記載されます。つまり、信託契約に基づき、「所有者(委託者)」から「受託者」への所有権移転登記手続きが行われます。

ちなみに、登記の目的は以下のように記載されます。

登記の目的:所有権移転及び信託
登記の原因:平成○○年○○月○○日信託
登録免許税:固定資産税評価額の0.4%(平成29年3月31日までは、土地の信託に関しては、固定資産税評価額の0.3%)

これは形式的な所有権移転といえるため、委託者兼受益者である場合には、実質の財産権は移行していません。つまり「委託者=受益者」として締結された信託契約であれば、財産権が「所有権」から「受益権」という名前に変更しただけで、信託財産の帰属先に変更はありません。

しかしながら、この後、委託者が認知証になったとしても、所有者欄には、受託者が記載されていますので、受託者の権限で不動産の売却や融資に取り組むことができます。

<信託契約時における不動産登記に欠かせない信託目録とは?>

贈与や売買を原因とする所有権移転登記と異なる箇所があります。それは、不動産が信託された場合の登記簿には、信託目録が必ず作成されます。

信託目録には、受託者が信託により、財産の管理処分権限を持つこと、そして信託で得た収益は受益者に帰属することなどが記されます。

受託者の権限だけではなく、信託の目的や開始・終了時期などの信託条項は、登記簿にすべて記載され、公示されることになります。

「受託者にどこまでの管理処分権限があるのか?」「信託監督人などの同権利者が立てられていないのか?」を不動産取引の関係者が確認できるようになっています。

このように信託条項には、詳細に決められた信託契約の内容が記載され、不正のないように配慮がなされています。ちなみに、信託条項に何を記載するのかは司法書士の判断によって分かれます。

 

信託すると財産は誰のものになるのか?

財産を信託した場合、その財産は、誰のものになるのでしょうか?

A説「信託財産は、あくまで託しているだけなので、所有者は委託者のままである」
B説「信託財産の管理、処分を行うのは受託者なので、実質的に受託者のものである」
C説「信託財産は、受益者のために託されている財産だから、受益者のものである」

さあ、みなさんは、どの説が正しいと思われますか?

信託されると、財産の名義は委託者から受託者へ移ります。なぜなら受託者は、信託財産の管理や処分を行う必要があるからです。

しかし、これは便宜上名義が変更されているだけであって、信託財産が受託者のものになったというわけではありません。

では、やはり信託財産は依然として委託者のものなのかというと、名義も管理・処分権限も受託者に託してしまっていますから、そうではありません。

したがって、A説もB説も正しいとはいえないということになります。

では、C説はどうでしょうか? 受益者は、信託されることによって、信託財産から生じた利益を受ける「受益権」という権利を取得します。

これは、あくまで利益を受ける権利を取得したに過ぎないのであって、財産そのものを取得しているわけではありません。よって、C説も正しくないということになります。

さあ、すべての説が正しくないという結果になりました。

何だかみなさまをだましたような形になりましたが、結論を申し上げますと、信託財産は誰のものかと問われれば、「誰のものでもない」が正解なのです。信託財産として、独立した状態とも言えるかもしれません。

 

なぜ、信託を活用した場合は流通税が削減できるのか?

近年、新規の法人を設立し、不動産オーナー個人が保有する賃貸物件を、法人へ所有移転するという手法が増加しています。

いわゆる、「法人化」と呼ばれています。
法人化には、次のようなメリットがあります。

1.法人に財産を移転することで、個人の財産が減り、相続税対策になる。
2.不動産所得の代わりに給与所得にすることで、所得税対策になる。

もちろん、不動産オーナー全員が上記の手段を採用することが最適かどうかは、個人の条件によって異なります。

是非、相続税対策の詳しい税理士へご相談ください。

さて、この法人化に取り組む際の課題が、流通税が高いということです。どのくらい高いのかご存知でしょうか?

例えば、固定資産税金1億円の建物を法人へ譲渡する場合を検討してみましょう。

登録免許税が200万円、不動産取得税が400万円も発生します。

ここで皆様にお伝えしてきた信託の登場です。不動産を信託した場合の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。

そして、不動産取得税は非課税です。

つまり、上記の固定資産税金1億円の建物を信託した場合は、登録免許税が40万円、不動産取得税は非課税なので、合計40万円で済みます。

この差額は大きいです。

信託の方法としては、自益信託(委託者=受益者)の設定後、受益権を売買するという手法を採用します。この時の受益権の評価は、建物の場合は、もちろん簿価評価です。受益権を法人へ売却することで、法人化と同じ効果をもたらします。

登記的な視点を考えると、信託条項の受益者欄を変更します。

登記の目的:受益者変更
原   因:平成 年 月 日売買
登録免許税:不動産1個につき 金1,000円

何より、法人化しつつ信託を活用すれば、不動産オーナーの方の認知症対策になります。さらに、不動産の処分・管理・運用は、早い段階で子供たちへバトンタッチすることができるのです。

 

信託と預貯金は何が違うのか?

「信託と預貯金は何が違うのか」というテーマを考えてみます。皆様のお金はどこに眠っていますか?

家のたんす、会社の積み立て、保険商品…とさまざまなものが想定されますが、多くの方は銀行に預けているのではないでしょうか
皆さんが亡くなると「相続」が発生し、この預貯金は法律(民法)で定められた相続人に承継されます。そして、複数の相続人がいる場合、誰がこの預貯金を取得するのかを相続人の間で話し合う必要があります(この話し合いを「遺産分割協議」といいます)。

銀行は、相続が発生したことが分かると一時的に口座を凍結させ、遺産分割協議が完了し、相続人からの手続きが行われるのを待ちます。なぜなら、この預貯金は、遺産分割協議が終わるまで、誰のものになるか分からない、宙に浮いたような状態だからです。

したがって、スムーズに話し合いが済めばいいのですが、「相続人が遠隔地に散らばっている」「相続人同士の関係が疎遠である」「相続人同士で財産の分け方がまとまらない」「認知症の方がいて話し合いができない」など、さまざまな要因で長期にわたって財産を眠らせているケースも数多くあります。

では、信託を活用した場合はどうでしょうか?
一つ例を挙げて考えてみましょう。Aさんは配偶者Bと二人暮らし。前妻との間に生まれた娘Cと、Bとの間の息子Dがいます。配偶者のBと前妻の娘Cは折り合いが悪く、自分が亡くなった後の相続手続きは、スムーズに進みそうにありません。

そこで、配偶者Bのために、当面の生活資金として、現金500万円を息子Dに信託することにしました。このとき、息子Dが自己の財産として所有している現金と、Aさんから信託された500万円は区別して管理されます。

もちろん、信託された財産を銀行に預けることもできます。その場合は、受託者D信託口座という名義で口座が開設されます。

ここで、Aさんが亡くなったとします。当然、Aさんの財産は、相続手続きの対象になり、配偶者B、娘C、息子Dが話し合って、誰が何を取得するのかを決めていくことになります。

しかし、このケースでは、信託しておいた500万円が入っている信託口座は凍結されないのです。
なぜなら、信託財産は、「誰のために何の目的で預けた財産なのか」という点が明確になっているので、相続手続きを待たずとも、定められた目的に従って管理・運用されれば良いからです。

これが、信託を利用することのメリットの一つです。遺された財産は、ともすれば長引きがちな相続手続きに左右されることなく、円滑に管理・運用することが可能なのです。

マイケル・ジャクソンも実は信託を活用していた!?

民事信託の具体的な活用例として、世界的に有名な「マイケル・ジャクソン・ファミリー・トラスト」を挙げてみましょう。

実は、アメリカでは日本とは異なり、亡くなった方の財産が当然に法律で決められた相続人へ引き継がれる「当然相続主義」を採用していません。そのため、相続財産の帰属や遺言の内容、遺産分割協議などについて、すべて裁判手続き(プロベートといいます)を受ける必要があります。このプロベートは、費用もかかる上に非常に手続きが複雑で、長い期間を要する傾向にあります。そこで、このプロベートを回避するため「リビング・トラスト」と呼ばれる生前信託が普及しています。
リビング・トラスト(生前信託)」とはその名の通り、生前に財産の名義を家族などに移す信託制度のことで、マイケル・ジャクソンも、このリビング・トラストを利用していました。

その内容をご紹介いたしましょう。まず、「遺産のすべてを生前に設立した財団『マイケル・ジャクソン・ファミリー・トラスト』に信託する」という遺言を作成しました。

信託された遺産は、その40%を母キャサリン・ジャクソンへ、40%を3人の子どもたちへ、そして残りの20%を寄付するという内容です。皆さんならもうお分かりでしょう。委託者はマイケル・ジャクソン、受託者は財団、受益者は、母、3人の子、慈善団体という構成です。

受益者である3人の子どもについては未成年であったため、成人するまでは、信託財産の中から生活費や教育費を受け取って、30歳でその1/3を、35歳で1/2を、40歳で残りの全額を自由に使えるとされており、遺された遺族の生活を長期的な視野で手厚く保護する仕組みになっていたのです。

ここで、「遺言で家族へ財産を遺せばいいのでは?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、遺言でも財産を遺すことはできますが、遺産は一括して承継されるため、子どもたちが財産管理能力が不十分な若いうちに、すべての財産を消費してしまうというリスクもあります。

上記のように、継続して安定的に遺産を承継できるような信託の仕組みを作っておけば、財産管理能力が十分に備わっていない未成熟な子や、身体的・精神的な障がいにより特別な配慮を要する相続人、浪費癖のある相続人への資産承継として、理想的な形を作り上げることができるのです。

 

子供がいない夫婦の相続対策には遺言書が不可欠

相続が発生した場合、「遺産がどれくらいあるのか」「相続人は誰なのか」を把握することから始まります。
 今回は子供がいない夫婦で相続が発生したときの、相続人の範囲について解説していきたいと思います。
もし、自分がまったく知らない、あるいは疎遠な親族が相続人となってしまう可能性があるならば、早急に対応することをお勧めします。

子供がいない夫婦のうち、一方が亡くなった場合の相続を考えてみます。
たとえば、夫が死亡したとしましょう。
 通常、子供がいる場合には、妻が2分の1、子供が2分の1の相続分で相続することになるので、子供がいなければ、妻がすべて相続すると思い込んでいる方が多いです。
 夫婦2人でずっと生活してきて、夫が亡くなった場合、すべての遺産が妻のものとなると考えてしまうのも無理もありません。
しかし、被相続人である夫の親が生きていれば、妻に加えて、夫の親も相続人となるのです。
この場合、法定相続分は妻が3分の2、親が3分の1となります。

夫の親がすでに死亡していれば、夫の兄弟姉妹が相続人となってしまいます。
  法定相続分は妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。

しかし、現実的には、被相続人の親が生きているケースよりも、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースのほうが多いでしょう。

問題なのは、被相続人である配偶者の兄弟姉妹が相続人になる点です。
 配偶者の兄弟姉妹と日常的に仲良く連絡を取り合っている例はあまり多くないと推測されます。
しかし、現在のお年寄り世代は兄弟姉妹が多いので、この場合には、遺産分割協議を円滑に進めることが困難になることがよくあります。

さらに、配偶者の兄弟姉妹のなかで、すでに死亡している人がいて、その人に子供がいる場合は、その者(甥や姪)も相続人となります。
こうなると、ますます厄介です。
 配偶者の甥や姪とは面識があまりないケースは珍しくありません。
 甥や姪が素行不良で浪費癖があったり、遠く海外に住んでいたり、果ては行方不明になっているケースもあるのです。
このようにコミュニケーションをほとんど取ったことがない疎遠な親戚同士で遺産分割協議を行うのは、極めて難しいでしょう。

もし、子供がいない夫婦で、両親がすでに亡くなっていて、配偶者の兄弟姉妹あるいは甥・姪が相続人となることがわかっているならば、遺言書を作成しましょう。
 「夫に(妻に)遺産のすべてを相続させる」という遺言書を書くことをお勧めします。

子供がいない夫婦こそ、相続対策が必要です。
この機会に遺言書の作成を考えてみてはいかがでしょうか。

こんなお悩み・ご希望はありますか?

  • 成年後見制度を利用したあとも、相続税対策をしたい方
  • 障害をもつ親族や子どもがおり、自身で財産管理ができないため、自分の亡くなった後が心配な方
  • 前妻や前夫の連れ子がいる、意思能力がない人がいる等、スムーズに遺産分割協議を行えない不安がある方
  • 株主が経営者1名のため、認知症になると経営がストップする不安のある方
  • 二次相続以降に資産継承に不安や特定の希望がある方
  • 不動産や株式を保有しており、相続が発生した場合、共有名義になる可能性がある方
  • 株式が経営者以外に
    も分散したい方
  • 経営権を引き継ぎたい
    が、贈与や譲渡すると
    税金が不安な方
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